天文館星めぐりのブログ

岩手県紫波町にあるギャラリー「天文館☆星めぐり」の活動や展示写真の紹介をします

【天文館☆星めぐり】2019年冬の企画展示「彗星」

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現在「天文館☆星めぐり」では、彗星をテーマに紫波町内や岩手県内で撮影した写真を展示しています。その中から特に思い入れのある彗星を紹介します。

 彗星とは?

彗星の歴史

彗星は「ほうきぼし」ともよばれ長い尾を持っています。紀元前の昔から、突如やってきては去っていくふしぎな天体として知られています。

明るい彗星が現れると「何か不吉なことが起こる」「国の王様を変えた方がいい」など、中国やヨーロッパの東西を問わず、彗星が来ることを恐れられていました。

ところが、エドモンド・ハレーという人が76年ごとに明るい彗星が来ることに気づき、1756年ごろにまた彗星がもどって来ることを予言しました。1742年にこの世を去ってしまいましたがハレーが死んでから16年後、その年がやってきました。

 ハレーが予言した彗星をさがそうと、ヨーロッパでは彗星発見の競争が行われ、1758年にアマチュア天文家により発見されました。2年ほど遅れましたがそのずれも計算により確認されました。そして、このすい星をハレー彗星と呼ぶようになりました。

これで、彗星は周期的に戻ってくることがわかったのです。ハレー彗星は1番目の周期彗星という意味で1Pと呼ばれています。

彗星の正体

彗星は、惑星のように太陽を回っており、1回しか太陽に接近しないもの、周期200年以下の周期すい星、200年以上の長周期彗星に分類されています。

さて、彗星は何からできているのでしょうか?

現在では、人工衛星が近づいたりして「黒い汚れた雪だるま」のようなものでできており、太陽に近づくと表面からガスやチリが噴出し、尾になることが観測されています。

尾として出た物質が地球に落ちてくると「流星」として観測されます。彗星は流星の母なのです。

そして、太陽系が誕生した当時と全く変わらないままでいるものと考えられています。彗星を観測することにより、太陽系の誕生当時の46億年前のことがわかるということです。

実は毎週のように様々な彗星が地球に接近しているのですが、ほとんどの彗星は肉眼で観察できるほど明るくないため、望遠鏡や双眼鏡がなくては観察できません。

 様々な彗星

ここでは5つの彗星の写真を紹介します。どれも岩手県内で撮影したものです。

すばるとラブジョイ彗星

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撮影 2015年 1月20日 21時17~31分 Canon28~70mmF2.8→F4 + 60Da ISO1600
露出 131+288+202計621”3枚
撮影地 紫波町佐比内

写真左側の光が集まっているところが「すばる」右下の緑色の光が「ラブジョイ彗星」です。
ラブジョイ彗星は太陽に一番近づいた後尾が発達しすばるに接近しました。このころ明るさは3等星、尾の長さは7度くらいまで伸びています。

 パンスターズ彗星

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撮影 2013年 3月24日 19時35分  200mmF4 60Da ISO1600
露出時間:60“(2コマ)
撮影地 花巻市

写真中央の光が「パンスターズ彗星」です。
この写真は、2011L4パンスターズ彗星が2013年3月に太陽に接近し、夕空に明るく輝きました。数度以上の尾が伸び、肉眼でもわかりました。

このすい星は、もう二度と太陽に戻ってこない軌道であり、太陽系外からやってきた彗星です。 

ホームズ彗星

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撮影 2007年 12月 4日 20時45分  300mmF2.8→4 S3pro ISO1600
露出時間:106+208+222+200“(4コマ736”)
撮影地 紫波町片寄

ホームズ彗星はあまり太陽に近づかず普段は15等星以下ですが、この年10月下旬に17等星から2等星まで4万倍の明るさになりました。 

1892年に発見された時以来のアウトバーストで120年ぶりのことです。アウトバーストとは、彗星の本体から多量のガスやチリが放出され、明るくなることです。 

ヘールボップ彗星

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撮影 1997年 3月18日 4時00~03分 MT200mmF6→F4.8 + PentaxME +フジカラーSG800
露出 3分
撮影地 紫波町日詰地内

1995年7月にアメリカのヘールさんとボップさんにより10等星で発見された彗星が、1997年3月に太陽に近づき0等星に明るくなり、尾も立派に発達しました。

特に、頭部から青いイオンの尾がクネクネと伸び、扇型にダストの尾が発達しました。

このすい星の周期は2530年と計算されており、また戻ってくるでしょう。2000年後の世界?ちょっと想像できませんが… 

百武彗星

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撮影 1996年 3月25日 23時0分~7分  AP55mmF1.8→F2.8 +フジカラー400増感現像
露出時間:7分
撮影地 奥州市衣川区

この写真は九州の百武裕司さんが1996年1月に発見したすい星で、3月下旬には北斗七星付近でぼーっとした頭に、尾がなんと数十度まで延び世紀の大彗星へと変身し異様な姿でした。

おわりに

太陽系が誕生した時から姿を変えないといわれる彗星。様々な周期で訪れるため、一生に一度しか見られない彗星もめずらしくありません。

一生に一度かもしれない瞬間を記録して、その景色を共有できるのも写真の魅力です。

長い尾をもつ美しい彗星を見ながら、46億年前の宇宙に思いをはせてみると、なんとも不思議で、宇宙の神秘を感じますね。

ギャラリーにはこのほかにも彗星の写真を展示しています。興味のある方は、どうぞお気軽にお越しください。